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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第160回

斎藤智

麻美は、しっかりヨットの戸締りをしてから、船を降りた。

これから、熱海のお風呂、温泉に入りに行って、その帰りに本日の夕食の買い物をしてくる予定だった。

クルージング中は、ヨットが皆の家になるので、出かけるときはヨットの戸締りをしっかりしなければならない。

「どの温泉に入る?」

「いっぱいあって、迷ってしまうね」

港を離れて、熱海の道をぶらぶらと歩いていた。

マリオネットの人たちも一緒だった。

「とりあえず駅のほうにぶらぶら歩いてみようか」

皆は、特に目的もなく熱海の街の散歩を楽しんでいた。

「すごい魚!」

大きな魚が店頭のバケツの中でたくさん泳ぎ回っている魚屋さんの前で隆と洋子、香織、美幸は立ち止まった。

「どうしたの?」

4人が並んで、皆の先頭を歩いていたので、後ろを歩いていた連中は、先頭に釣られて魚屋の前で立ち止まってしまっていた。

「お魚がすごいの!」

「すごい。可愛いね」

獲れたての魚がバケツの中で元気に泳いでいるのを眺めていた。

「これも食べれるのかな?」

隆は、魚を見るとすぐに食べれるかが気になってしまう。

「うまいよ!天ぷらにしたら最高だ。網焼きも美味しいと思うよ」

店の奥にいた頭がツルツルに禿げあがった店主のおじさんが出てきて、言った。

「網焼き?」

「ああ。魚の体全体にしっかり塩をまぶしてから、網で焼くんだよ」

魚屋のおやじは、調理の仕方を教えてくれた。

「今日の夕食にしない?」

隆は、魚屋のおやじさんの美味しそうな説明に食べたくなって、麻美に聞いた。

「いいけど、これからお風呂に行くのだから、帰りにしましょう」

麻美が答えた。

「お風呂から帰ってくるまでに塩をまぶしておこうか?そうすれば家に帰ったら、あとは網でやくだけで良くなるよ」

魚屋のおやじが麻美に言った。

「どうする?」

麻美は、ほかの皆に聞いた。

「食べてみたい」

ルリ子が言った。

「じゃあ、おじさんにお願いしておこうか?」

「うん」

魚屋のおやじに、お風呂に行って帰ってくるまでの間に、調理の準備をしておいてもらうことになった。

「あのおじさんも、まさか私たちが家でなくてヨットに住んでいるとは思ってもいないだろうね」

洋子は、隆に言った。

「そうだね。どういう風に思われているのかな?大家族だと思われているのかな」

「大家族だったら、隆さんがお父さんで、麻美ちゃんは皆のお母さんね」

香織が言った。

「佳代ちゃんは、一番下の末っ子の妹かな」

洋子が、後ろを歩いていた佳代の頭を撫でながら言った。

佳代は、洋子に撫でられて、嬉しくて笑顔になっていた。

「私は何になるかな?」

マリオネットのほかのメンバーと後ろを歩いていた中野さんが会話に入ってきた。ラッコのメンバーたちが返事に困っていると、

「おじいちゃん」

マリオネットの男性クルーたちが答えて、皆は大爆笑になっていた。

「あ、熱海駅!」

美幸が、目の前に現れた駅を見て叫んだ。

港の前の道をずっと歩いているうちに駅前まで来てしまったのだった。

「JR?新幹線の駅なんだね」

「ここから、新幹線に乗ったら、横浜まで電車でも帰れちゃうんだね」

「松山君。ここから明日来るんでしょう」

今年のヨット教室で、マリオネットに配属になった生徒の松山君という男性は、仕事の関係で金曜の夜からはクルージングに参加できなかった。

それで、後から電車で来て、皆と少し遅れてクルージングに参加すると言っていたのだ。

「うちらは、横浜マリーナを昨日の晩に出て、半日かかって熱海港に入港したのに、新幹線だったらわずか一時間ぐらいで到着しちゃうよ」

隆は言った。

「本当だね」

「でも、自動車でゴールデンウィーク中に熱海に来るんだったら、渋滞、渋滞で大変な目に会うよ」

「そうだよな。車だったら渋滞の中、通らなければならないけど、ヨットは渋滞はまったく関係ないものな」

隆は言った。

「まあ、車で来ても、隆さんには渋滞はまったく関係ないでしょう。どうせ麻美ちゃんが運転するんだから」

「そうだな」

隆は、洋子に賛同した。

「さあ、温泉行こう!」

皆は、駅を離れて、日帰り温泉ができるホテルを探しに向かった。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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