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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第186回

斎藤智

最終的な順位は・・ともかく、ラッコも無事ちゃんとゴールして横浜マリーナに戻って来た。

「お昼が、おにぎりだけだったから、お腹空いたな」

「私も!」

「ヨットの後片付けが終わったら、ショッピングスクエアのほうに行って、何か食べようか」

「賛成!早く片付けて食べに行こう」

隆の提案に、クルー皆が賛成して、片付けが終わったら、横浜マリーナ併設のショッピングスクエアで食事しようということになった。

お腹が空いているので、早く食べに行きたいために、皆の片付けの手も自然と早く動くようになっていた。

「ねえ、佳代ちゃんのこと借りてもいい?」

お昼に食べた後のタッパーとかを洗いに行っていた麻美が、ヨットに戻って来て隆に言った。

「どうぞ。どっか行くの?」

「佳代ちゃん、焼きそばを焼くの手伝って」

ヨットの片付けをしていた佳代に、麻美が言った。

「下のマリーナの広場で、ミニパーティーをするんですって。そこで食べる料理の準備を手伝ってくれって、横浜マリーナのスタッフに頼まれたから、ちょっと佳代ちゃんを連れて手伝ってくるね」

麻美は言った。

「隆たち皆も、ヨットの片付けが終わったら、食べに降りておいでよ。ヨットレースに参加した人たちは皆、パーティーに参加していいらしいから」

出かけていく前に、麻美はそう言ってから出かけていた。

「今日は、レース後のパーティがある日なんだ」

「良かったね。ショッピングスクエアに行かなくても、下のパーティでごはんが食べられるね」

皆は、早々と後片付けを終えると、ヨットに鍵をかけてマリーナの広場に向かった。

横浜マリーナの艇庫とクラブハウスの間にあるちょっとした広場には、小さなテントが張られていて、その下では、焼きそばやら、お肉、バーベキュー、肉汁などが料理されていた。

テントからは、料理の湯気が美味しそうな匂いと一緒に漂っていた。

「うまそう!」

「お腹が鳴っちゃう」

ラッコの皆は、テントの周りに集まった。

ほかのレースに参加したヨットのクルーたちも、もうそこに集まって来ていた。

肉汁のお鍋の前では、麻美と佳代がいて、肉汁を作っていた。

「肉汁ください」

二人の前に行って、隆が声をかけた。

「はい、お客さん。お野菜がちゃんと取れるように、しっかりお野菜を多めにしておきましたから、全部ちゃんと食べてくださいね」

麻美が、紙のお椀に肉汁をすくって、隆に手渡した。

確かに、隆の受け取った肉汁には、じゃがいもやニンジン、白菜など野菜が多めに入っていた。

「野菜が多くて、うさぎになった気分だな」

隆は、その肉汁を食べながら言った。

「いいじゃない。隆君は、うちじゃ一人暮らしなんだから野菜をいっぱい取れて…」

同じく肉汁を食べながら、雪が隆に言った。

「麻美ちゃんからの愛情なんだから、ちゃんと食べてね」

洋子が笑顔で言った。

「うわあ!」

テントの隣に置かれていたバーベキューの鉄板から炎が勢いよく上がって、その周りにいた男性たちから大きな歓声が上がった。

鉄板の前では、暁のオーナーの望月さんが、大きな肉の塊を豪快に焼いていた。

「そろそろいいぞ!焼けてきたよ!」

焼きあがった肉を刺した箸を高く上げながら、望月さんが叫んだ。

その声を待っていましたとばかりに、参加者たちは皆、バーベキューの前に並んでいた。

「すごい行列だな。後でもう少しすいてから、もらいに行くか」

隆は、肉汁を食べながら言った。

「お肉もらいに行こうよ」

「いま混んでいるよ」

「待っていたら、無くなってしまうかもよ」

ルリ子と洋子は、混雑しているバーベキューの中に入っていって、お肉をもらいに行った。

「第一弾のお肉は完売!第二弾をこれから焼くから、もうちょい待っていてね」

焼きあがったお肉は、あっという間に無くなり、さらに第二弾のお肉を、望月さんは、これから焼き始めるらしい。

「お肉、もらってきたよ」

ルリ子と洋子は、しっかりと第一弾で焼かれたお肉をもらってきていた。

しかも、お皿を何皿か持っていて、雪や隆たちの分までもらってきてくれていた。

肉汁の調理は、ひと段落して、麻美と佳代たちも一休みしていた。

「麻美ちゃんたちも、お疲れ様」

ルリ子が、二人のところに行って、持っていたお皿を渡した。

「ありがとう」

ルリ子が持っていったお皿は、一皿しかなかったので、麻美は、それを佳代に渡した。

「佳代ちゃん、先に食べていいよ」

麻美は言った。

「ねえ、隆さんは、お肉まだ食べないよね」

隆がまだ肉汁を食べていて、洋子たちからもらった肉のお皿は、そのままだったので、洋子は、それを持って麻美たちのところに行ってしまった。

「麻美ちゃん、このお肉を食べて」

洋子は、麻美にそのお皿を渡していた。

「ありがとう」

麻美は、そのお皿の肉を食べていた。

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麻美は、洋子からもらったお肉を食べていた。

「美味しいね、このお肉。望月さんの焼き方が上手なのね」

麻美は、お肉の感想を言った。

「俺の肉、食べているんだ」

肉汁を飲み終わった隆が、麻美のところに来て言った。

「隆さんのお肉もらちゃって、麻美ちゃんに上げたから」

洋子が麻美に説明した。

「そうなの」

「隆さんは、ちょっとだけ我慢してね。第二弾のお肉が焼けたら、またもらってきてあげるから。麻美ちゃんは、肉汁作りしてて、まだ何もお料理食べていなかったから」

洋子は、隆のことを慰めた。

「いや、いいよ。別に…」

隆は答えた。

「肉汁、もらおうかな」

肉汁コーナーに、肉汁が欲しいお客さんがやって来たので、麻美とルリ子は、また肉汁担当に戻っていた。

「あっちのアメリカンドッグと焼きそばをもらいに行こうか」

麻美たち二人が、肉汁担当で忙しそうなので、隆は、洋子を誘って、焼きそばを鉄板で配っているところに行った。

「これも美味しそうじゃん」

隆は、焼きそばのお皿の脇にアメリカンドッグを置いてもらって食べながら言った。

「美味しいよね」

洋子も、焼きそばを食べながら言った。

「美味しそう!」

雪も焼きそばをもらって食べながら言った。

焼きそばを鉄板で焼いていたのは、マリオネットの中野さんだった。

「中野さんは、いつも横浜マリーナのパーティーでは、焼きそば作り担当で、中野さんの焼きそばは皆に人気あるんだよ」

隆が言った。

「それじゃ、麻美ちゃんたちの分ももらってこなきゃ」

自分の分を食べ終わった洋子は、麻美やルリ子たちの分をもらいに、焼きそばの列に並びに行った。

「隆君、ダメじゃない」

洋子の後ろ姿を見ながら、雪が隆に言った。

「え、何が?」

「麻美ちゃんの焼きそばは、洋子ちゃんじゃなくて隆君がとって来てあげなくちゃ」

雪に言われて、隆は照れていた。

「照れてるだけじゃだめよ」

雪だけでなく、香織にまで隆は言われてしまっていた。

「まいったな」

隆は、頭をかいていた。

皆は、焼きそばを食べ終わって、麻美たちの分の焼きそばを持って、肉汁コーナーに戻って来た。

「肉汁いりますか?」

戻って来ると、肉汁コーナーには、麻美とルリ子に、美幸までもが加わっていた。

「隆さんもいる?」

美幸が肉汁をすくって、隆の前に出した。

「俺は、さっき食べたんだ」

「そうなんだ」

美幸は、残念そうに、隆のためにすくったお椀をテーブルの上に置いた。

「でも、もう一杯ぐらい食べようかな」

隆がそう言ったので、美幸は嬉しそうに、お椀を隆に手渡した。

「うまい!」

隆は、美幸からもらった肉汁を食べて言った。

「さっき、麻美からもらったのは、野菜ばかりだったから、これはちゃんと肉がいっぱい入っていてうまい」

「だって、隆ってすくって入れてあげないと、野菜をちゃんと食べないんだもん」

麻美は言った。

麻美ちゃんの前で、そんなことを言ったらだめよねと言わんばかりに、雪が隆の脇を突っついていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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