Skip to content

イルカの群れ

1本を読もう

2本を読もう

3本を読もう

4本を読もう

5本を読もう

6本を読もう

7本を読もう

8本を読もう

9本を読もう

10本を読もう

11本を読もう

12本を読もう

13本を読もう

14本を読もう

15本を読もう

16本を読もう

17本を読もう

18本を読もう

19本を読もう

20本を読もう

21本を読もう

22本を読もう

23本を読もう

24本を読もう

25本を読もう

26本を読もう

27本を読もう

28本を読もう

29本を読もう

30本を読もう

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第79回

斎藤智

「なに?イルカがいるの!?」

船内でギャレーの片づけをしていた麻美が、佳代に呼ばれて出てきた。

佳代が、船内にいた麻美のことを、イルカがいるよって呼びに来てくれたのだった。

「うわ!なに、すごい数じゃない」

デッキに出た麻美は、海にいるイルカたちを見て驚いた。

ルリ子がデジカメで写真撮りたいからってイルカに呼び掛けたら、まるで、それに応じたように、沖で泳いでいたイルカたちが、ラッコのほうに近づいて来ていたのだった。

「なんかラッコの側を泳ぐイルカって言葉がおもしろいな」

「そうだね。イルカとラッコが一緒って、ラッコがイルカに食べられっちゃわないかな」

洋子と隆は話していた。

ラッコに寄って来たイルカたちは、嬉しそうにラッコの横を併走していた。中には、ラッコのすぐ真下の船底を、くぐって見せているイルカもいた。

「こんなに近づいてきて、ヨットにぶつからないでくれよって、ルリは、ちゃんとイルカに伝えてくれよ」

隆は、イルカの写真を撮り続けてるルリ子に言った。

麻美は、佳代や洋子と一緒に、ヨットの周りを飛び回っているイルカたちをずっと眺めていた。

「イルカって、こんなに人に慣れているの」

「人というよりも、イルカは船が好きみたいで、船と一緒に並んで泳ぐことって多いみたいよ」

隆は、麻美に聞かれて、答えていた。

結局、イルカたちは、三浦半島の剣崎辺りまで、ずっとラッコと一緒に併走してついてきた。

剣崎の辺りまでやって来ると、イルカたちは、一匹ずつ、またUターンして、最初に出会った辺りに戻っていった。

「バイバイ!元気でね」

イルカたちは、東京湾の入り口に戻って行き、ラッコは、東京湾の内側、横浜マリーナを目指して進んでいった。

ここでイルカたちとは、お別れだ。

バイバイ

「一匹ぐらい、横浜マリーナまで、一緒についてきてくれたらいいのに」

すっかり、イルカのことが気に入ってしまったルリ子は、名残惜しそうにつぶやいた。

「でも、せっかく皆と一緒に暮らしているのに、一匹だけ横浜マリーナに来ちゃったら可哀そうよ」

「そうだよね」

麻美に言われて、ルリ子も納得していた。

ラッコは、マリオネットや海王たちと横浜マリーナに戻っていった。

忙しい日々

もう週末も近い金曜日だというのに、隆は忙しかった。

「うわ、こりゃ、もうダメだな。今日中には終わらないよ」

大島クルージングに行った三連休が明けた後の平日のことだった。

さっきから、大量に積み上がっているダンボールの箱を開けては、中から部品を取り出して、組み立てている隆は、手を休めてつぶやいた。

何十万と入荷してきた商品を、一度ダンボールから出して、アッセンブリー、組み立てて、お客さんのところに送らなければならなかったのだ。

朝から、社員総出でやっているのだが、目の前のダンボールは一向に減ってきている様子がなかった。

「今日中は無理でしょう。今日、時間までやったら明日も頑張ろう」

一緒にやっていた麻美も、手を止めて、隆に答えた。

「明日?明日は土曜日なんだけど…」

「うん。でも、仕方ないでしょう。出てきて頑張りましょう」

麻美は、お休みの日も、出てきて全部終わらせるつもりでいた。

「明日か。」

お休みの日まで仕事をしたくない隆は、明日も仕事と聞いて、ぶつぶつ文句を言っていた。

「まあ、明日は土曜日だから、明日は出てきて、やっても良いと思うけど、明日だけで終わると思うか?」

「そしたら、日曜日もあるじゃない」

「日曜日は、ヨットがあるよ」

「ヨットは、遊びなんだから、お休みするしかないでしょう」

麻美は、隆に言った。

隆は、仕事は残っていれば、するが、ヨットを休んでまでも、仕事をしたくはなかった。そんな隆を、麻美は一生懸命慰めながらも、終わらないときは仕事するように、と説教していた。

「まったく、どっちが社長だかわからない」

麻美は、それでもぐずぐず言っている隆に、思わず笑ってしまっていた。隆が、この会社の社長で、麻美はただの社長秘書のはずだった。

なのに、休みの日の残業を、社長はやりたがらずに、秘書の自分がやるようにとなだめているのだった。

「あ、時間だ」

時間がきて、隆は、仕事の手をやめて帰る準備をし始めた。

「明日も、仕事して終わらせるからね。終わらなければ、日曜もちゃんと会社に来て、仕事するよ。わかった?」

帰る準備をしている隆に、麻美は念を押した。

「はーい」

隆は、麻美に言われて渋々返事をしていた。

隆は、麻美には返事をしながら、もし日曜も休みでなくなったら、洋子たちになんて言って説明しようかと考えていた。

帰り道、そのことを麻美に話すと、

「そんなの正直に、仕事が残っているからと言うしかないでしょう。皆だって、それなら仕方ないねと言うだけよ」

麻美は、隆に答えるのだった。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

Comments

Comments are closed.

こちらのページもよくご覧になられています

 

Widgets

Scroll to top