Skip to content

楽々クルージング

1本を読もう

2本を読もう

3本を読もう

4本を読もう

5本を読もう

6本を読もう

7本を読もう

8本を読もう

9本を読もう

10本を読もう

11本を読もう

12本を読もう

13本を読もう

14本を読もう

15本を読もう

16本を読もう

17本を読もう

18本を読もう

19本を読もう

20本を読もう

21本を読もう

22本を読もう

23本を読もう

24本を読もう

25本を読もう

26本を読もう

27本を読もう

28本を読もう

29本を読もう

30本を読もう

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第72回

斎藤智

「おはよう」

船尾の部屋から起きてきた隆は、パイロットハウスで舵を取っているルリ子に声をかけた。

「ずいぶん、楽した操船をしているじゃない」

普通のヨットならば、寒くてもデッキに出て、そこで舵を取らなければならないのに、ラッコはパイロットハウスが付いているので、船内で操船することもできる。

それを利用して舵を取っているルリ子に言った。

「そうでしょう。佳代ちゃんが考え出したの!ここで操船すれば、暖かく操船できるでしょう!」

ルリ子は、隆に自慢した。

「無精だね」

隆は、苦笑していた。

ラッコのオーナーになる前は、ずっとレース艇のクルーをしていた隆だったので、寒くても、暑くても、いつもコクピットで舵を握っているのが当然だと思っていたのだ。

でも、この船には、せっかくパイロットハウスが付いているのだし、楽にクルージングするのも嫌いではない隆だった。

いや、むしろ、せっかく付いているのだから利用した方が良いだろう。うまくパイロットハウスを利用していた佳代に脱帽だった。

「あれ、麻美は?」

ウォッチ担当のはずの麻美の姿がないので、隆は、きょろきょろと麻美を探した。

「後ろの部屋で寝ているよ」

「え、隆さんと一緒に寝ていたんじゃないの?」

ルリ子と佳代が、一斉に答えた。隆は、自分が寝ていた後ろの部屋のドアを開けて、中を覗いた。

「あ、本当だ。ここで寝ていたのか。布団をかぶって寝ているから、ぜんぜん気づかなかったよ」

隆は言った。

それを聞いて、ほかの二人は笑いだした。

「代わろうか?」

隆は、ウォッチの交代かなって思って、ルリ子に言った。

「ありがとう」

ルリ子は、舵を離して、隆と代わった。

船首の部屋から洋子も起きてきた。

隆と舵を交代したルリ子は、パイロットハウスのサロンに腰かけて、テーブルの上のポテトチップに手を伸ばした。

「お腹空いただろう?麻美のこと、起こして朝ごはん作らせようか」

ポテトチップを食べているルリ子を見て、隆は聞いた。

「大丈夫。麻美さんって、なんか疲れていたみたいだし…」

「っていうか、今朝の朝ごはんは、私が作るよ」

洋子がギャレーの前に立って、言った。

「そうか。洋子って料理できるのか?」

隆に聞かれて、洋子は、無言で苦笑していた。

洋子は、家でも料理は、いつもお母さん任せで、あまりしたことが無かった。

筆島、アゲイン

「美味しいじゃない!」

隆は、パイロットハウスのサロンに座って、洋子の作った朝食を食べながら、言った。

「うん。美味しいよ」

ほかのクルーたちも、洋子の作った朝食を口々に褒めてくれたので、エプロンをしてステアリングを握っていた洋子は、ちょっと満足だった。

「おはよう」

皆よりも、遅く起きてきた麻美が、よく眠って、すっきりした顔で挨拶した。

「あら、洋子ちゃん。エプロンして、操船しているの」

麻美は、いつも自分がギャレーで料理するときに付けているエプロンをしている洋子の姿を見て、聞いた。

「洋子ちゃん、今朝の朝食は、作ったんだよ」

「麻美さんの分も、ここにあるよ」

洋子が答える前に、ルリ子や佳代が、麻美に答えた。

ルリ子が指さしたテーブルの上には、麻美の分の朝食の目玉焼き、ソーセージなどがお皿に盛られていた。

「ありがとう。ちょっと歯を磨いてきてから、いただくね」

麻美は言うと、船首のトイレ、バスルームに歯を磨きに行った。

麻美は、歯を磨いて戻って来ると、サロンに腰かけて、自分の分として用意されていた朝食を食べた。

「美味しいだろう?」

隆は、麻美が食事している姿を、じっと眺めながら聞いた。

「うん、美味しいよ。洋子ちゃん、お料理上手じゃない」

麻美は、洋子のことを褒めた。

「隆は、自分が作ったわけじゃないのに、そんなに心配そうな顔で、食べている私の顔を、確認しないでよ」

麻美は、隆が、じっと心配そうに、自分の食べている姿を覗きこんでいる、その姿が、可笑しいのをこらえながら言った。

「あ、筆島!」

パイロットハウスの窓から外を覗いていた雪が、大島の横に立っている筆島の姿を見つけて、叫んだ。

「おお、もう筆島の見えるところまで来たんだ」

大島の横に立っている筆島の姿を、皆は懐かしそうに眺めていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

Comments

Comments are closed.

こちらのページもよくご覧になられています

 

Widgets

Scroll to top