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初セイル

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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第115回

斎藤智

まだ真っ白なセイルが、横浜の海に上がった。

「せっかく麻美さんたちが乗ってくれているのだし、セイルを上げましょうか」

中島さんは、麻美たちに言った。

本当は、本日夕方より横浜マリーナのクラブハウスで、この船の進水式をするので、その後にセイルは上げるつもりでいた。

しかし、麻美たちも含めて、乗組員の数も揃っているし、進水式まで待っていられずに早くセイルを上げて、セイリングしたくなってしまったみたいだ。

「手伝いますから、どのロープを引いたらいいのか教えてください」

中島さんの新艇に乗っていたクルーの男の子が、麻美のところに来て言った。

クルーといっても、その男の子は、まだ数回しかヨットに乗ったことがなく、セイリングのやり方もまだよくわかっていないようだった。

「え、そうね」

麻美は、どのロープがセイルのどの部分に付いているのかを確認しながら、男の子に答えた。

「これが、メインハリヤードよね、それで、これがカンニンガムで、こっちがアウトホールかな」

佳代が、テキパキとシート、ロープの仕分けをしながら、セイルに掛かっているカバーを外していった。

「佳代ちゃん、よくわかるわね。このヨットに初めて乗るんでしょう」

「初めてだけど、ラッコのロープと構造は、同じだもの。隆さんが、基本的な構造を覚えておけば、どのヨットに乗っても、乗りこなせるからって言っていたし…」

確かに、麻美も、隆にそんなことを言われたことがあった。

それにしても、若さからなのか、初めて乗るヨットにも、躊躇することなくどんどん艤装していく佳代の姿に、すごいなと感動していた。

「これで、もういつでもセイルを上げられるよ」

セイルのセッティング準備を終えた佳代が、麻美に言った。

「それじゃ、上げましょうか」

麻美は、中島さんのヨットのクルーの男の子に、マスト側に立たせて、ロープを引くように指導した。

舵を握っている中島さんからの号令にあわせて、クルーの男の子がロープを引いていく。

佳代は、セイルが丸まらないように、上手にたぐっていく。

「はい、OKみたいよ。上がったよ」

麻美は、上空のセイルがぜんぶ上がり終わったのを確認して、男の子に告げた。

結局、麻美は、まったくセイルを上げなくても、佳代と男の子の若い二人だけで、セイルを上げてしまった。

「お疲れ様」

コクピットに戻って来ると、中島さんに言われた。

「私は、何もやらなかったけど、お二人だけでセイルを上げてもらちゃっいました」

「力の必要なところは、若い人たちに任せて、全体を監督する立場の人も重要だからね」

「私、ちゃんと監督できていたのかしら」

麻美は、中島さんに慰めてもらえて、少しホッとしていた。

待ちぼうけ

横浜マリーナのクラブハウスは、バタバタと大忙しだった。

中島さんの奥さん、知人たちに加えて、横浜マリーナのスタッフも、パーティーで使うビールや飲料類、食材などを運んでセッティングしている。

これから、中島さんの新艇をお披露目する進水式がクラブハウスで行われるのだ。

その準備のために、横浜マリーナのスタッフも忙しく動き回っているのだった。

横浜マリーナの会員ならば、誰でも自由にマリーナのクラブハウスを使用して、進水式などのパーティーをすることができた。

クルーの誰かの誕生会などちょっとした小さなパーティーだと、マリーナのスタッフが手伝うことなく、自分たちで自由にパーティーの準備をして、勝手に開催しているのだったが、進水式などで少し大々的に開催するとなると、横浜マリーナのスタッフがサービスで手伝ってくれた。

「どこに行ってしまったのかしらね…」

中島さんの奥さんは、横浜マリーナのポンツーンから沖の海を眺めながらつぶやいた。

「お父さん、鉄砲玉だから、出かけると、ぜんぜん帰ってこなくなってしまうよね」

中島さんの娘が、母親に言った。

中島さんの娘は、高校3年生になる。

既に、推薦入学で来年の大学への進学を決めていて、ほかの子たちが大学受験で大変なこの時期に余裕だった。

中島さんは、お昼ごろに新艇に乗って、海に出航してしまっていた。

娘と母親で、忙しそうに進水式に出す料理を作っているときに、その周りをうろうろしていたので、娘が思わず、じゃまだから船にでも行って、新しい船を見ていたらと提案してしまったのだ。

「ほんのちょっとだけ、船を出してくる」

船を見に行っていた中島さんが、クラブハウスに戻ってきて、娘たちに一言だけ声をかけると、出航してしまったのだった。

「これから進水式するんだよ」

「ああ、だから、ほんの少しだけ機走で沖を走ってきたら、戻って来るよ」

そう娘に声をかけると、中島さんは出かけてしまったのだった。

ほんの少しだけ…が、機走で走っているうちに横浜マリーナから八景島まで走ってしまったようだった。

そして機走だけのはずが、その帰り道に麻美たちが同乗して、セイルまで上げてセイリングしてしまっていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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