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波浮港に入港

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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第60回

斎藤智

大島が、だんだんと近づいてきた。

大島が近づいてくると、ラッコが向かっている先の島の中央付近に、白波が吸い込まれていく個所があるのが、見えてきた。

「あそこが、波浮港の入り口だから」

隆は、ステアリングを握っている雪に、行き先の説明をしている。

白波が吸い込まれている個所に波浮港の湾があって、その湾の内側に向かって、波が打ち寄せられて高くなっているのだった。

「波が高くなっていて、あそこの中を越えて行くのちょっと恐いね」

雪が言った。

「うん、波浮の港は、入り口の入港は、ちょっと難しいけど、その分、中に入ってしまえば、山に囲まれていて、静かで安心して停泊できる港だから」

雪は、ちょっと緊張しながら、ステアリングを握り直した。

「大丈夫だよ。入港のときは、俺がステアリングを代わるから、もう少しぎりぎりまでステアリングを握ってごらん」

「さあ、いよいよ入港だ!」

隆が、雪からステアリングを代わって、握りながら皆に声をかけた。

いつも、入港前は、もやいを船体の両舷に結んだり、フェンダーをぶら下げたりしている。ラッコのクルーたちは、コクピットのロッカーなどからロープやフェンダーを取り出して、いつものように準備しようとした。

「ロープやフェンダーの準備は、港の中にしっかり入港し終わってからでいいよ」

隆は、クルーたちに声をかけた。

波浮の入り口付近は、白波が高く、船が大きく揺られているので、その中でデッキを移動して、海に落ちてしまっても大変なので、コクピット内に留まっているように指示したのだった。

ラッコは、港の入り口付近の高い白波を越えて、波浮港に入港した。

マリオネットも、ラッコの後ろについて、波浮の港に入港した。

「大きな港!」

波浮港は、今まで停泊してきた伊豆七島の港のどころよりも、広くて大きな港だった。

夏の伊豆七島の魚港は、ボートやヨットなどのレジャーボートの数が多く、狭い港内には、ボートやヨットの白い船体が目立っていて、普段から停泊している漁船のほうが、端のほうで小さくなっていた。

しかし、

ここ、波浮港は、たいへん広い湾になっていて、停泊している漁船のサイズも大きく、数も多いので、やって来るボートやヨットに対しても、漁船も、しっかり存在感を出していた。

ラッコは、36フィートのヨットの横に2艇分の船が停泊できる空きスペースを発見して、そこに停泊した。

ラッコが無事に停泊し終わると、その横にマリオネットが停泊した。

波浮港観光

波浮に着いて、夕食の買い物に出かけることになった。

ヨットの扉を閉めて、バッグを持って、岸壁に降りる。波浮の港は、小さな村落で、港の漁協のある奥側に、家はまとまっている。

ちょうど、ラッコが停泊している場所の前辺りにバス停があり、そこから大島の中心街、元町や岡田に向かうバスが出ている。

バスに乗って、元町や岡田まで出れば、大きなスーパーや観光スポットもあって、楽しめるのだが、ラッコが大島に到着したのも遅く、時刻は既に3時近くになっていたので、買い物は、波浮の街で済ませることになった。

まずは、漁協に行って、そこで魚の調達をした。

魚以外の食材は、近くに木造の小さな雑貨屋があったので、そこで調達した。都心であまり見かけなくなった牛乳屋さんがあったので、そこでミルクとヨーグルトも購入した。ビンには、大島牧場産と書いてあった。

「そっちの階段を登ってみようか」

買い物が終わったので、見つけた古い石段を上がってみることになった。石段を上がったところに、古い木造の民家があった。

その中から観光客らしい4、5人の団体が出てきた。

「何かの観光スポットかな。入ってみよう」

その団体さんたちが出てきた民家の中に、隆たちは入ってみた。

入り口には、三つ折りの小さなパンフレットが置いてあった。そこには、「川端康成館」と書かれていた。

「川端康成が、雪国とかの小説を書いた場所ですって」

麻美が言って、入り口脇の階段を上がって行く。

佳代や皆も、麻美について上がって行った。

2階には、和室の部屋が、何部屋かあって、各部屋では蝋人形の川端康成が座って、小説を書いたりしていた。

各部屋の前の廊下には、大きな窓が付いていて、そこから波浮の港やその向こう、太平洋、伊豆七島が見えていた。隆たちは、しばらくその窓から自分たちが走って来た新島や利島を眺めていた。

「ここから伊豆半島も見えるのね」

「この景色を眺めながら、川端康成は伊豆の踊り子とかを書いていたのね」

川端康成の世界に、しばらく浸った後で、隆たちは、川端康成館を出て、船に戻った。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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