Skip to content

大島へ

1本を読もう

2本を読もう

3本を読もう

4本を読もう

5本を読もう

6本を読もう

7本を読もう

8本を読もう

9本を読もう

10本を読もう

11本を読もう

12本を読もう

13本を読もう

14本を読もう

15本を読もう

16本を読もう

17本を読もう

18本を読もう

19本を読もう

20本を読もう

21本を読もう

22本を読もう

23本を読もう

24本を読もう

25本を読もう

26本を読もう

27本を読もう

28本を読もう

29本を読もう

30本を読もう

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第59回

斎藤智

「おはよう!」

隆は、朝、デッキ上で歯を磨いていると、雪が起きてきたので声をかけた。

家にいるときは、家のバスルームの洗面台の前で歯を磨いているが、クルージングに出ると、歯を磨くのは、いつも船の後部デッキに出て、そこでコップと歯磨きセットを持って磨いている。

口をゆすぐのは、コップの水でゆすいで、ゆすぎ終わった水は、そのままデッキから身を乗り出して、海の中にぺっと出している。隆は、この解放感ある歯磨きが好きだった。

「なんかいい。私も自分の歯ブラシ持ってきて、ここで磨こうかな」

「うん、そうしなよ。気持ちいいぞ」

雪は、歯ブラシを取りに、いったん船内のキャビンに戻っていった。

「おはようございます」

雪と入れ替わりに、隣りに停泊しているマリオネットのキャビンから、クルーの坂井さんが出てきた。

Tシャツに短パン姿だ。

短パンから出ている足は、日に焼けて見事にまっ黒になっていた。

会社でエンジニアをしている彼は、いつも冷房のきいた部屋で、ずっとパソコンの前で仕事している。

横浜マリーナを出航したときは、オーナーの中野さんに、女の子の足みたいと笑われていたぐらい、白い足をしていたというのに、クルージングに出たこの数日間で、見事にまっ黒に変わっていた。

「すごい、寝ぐせついていますよ」

坂井さんの後ろから続いて出てきた奥さんの頭を見て、隆は言った。ショートの奥さんの髪が、寝ぐせで見事に上に跳ね上がっていたのだ。

「あら、そお」

坂井さんの奥さんは、隆に言われて、あわてて自分の髪を手で撫でていた。

「ただいま」

歯ブラシを取りにキャビンに戻っていた雪が、手に歯ブラシを持って、戻ってきた。雪の後ろから、ルリ子や佳代も出てきた。二人とも、やはり手に歯ブラシを持っていた。

「私たちも、外で歯磨きをしようと思って…」

三人は、後部デッキに並んで、歯を磨き始めた。

「今日は、どこに行くの?」

ルリ子は、振り返って、口に歯ブラシを入れたまま、隆に聞いた。

「今日は大島。大島の波浮港に船を入れて一泊して、そこから横浜に帰ろう」

「はーい」

ルリ子は答えた。

「もう帰るんだね。早いな。もっとクルージングしていたいな」

「私も。このまま一年間ぐらい、ずっと海を走っていたいかも」

ルリ子も、佳代も、もうすっかり海の女になっていた。

「俺も、一年間ぐらいクルージングしていたいな」

根っからの海の男の隆も言った。

快適セイリング

今日も快晴の中、ラッコはセイルを上げて快調に走っていた。

「で、隆はどうなのよ?」

麻美が、船尾のベンチに腰掛けている隆に聞いた。

「え、それは仕事が無ければ、俺も、このままずっと南の島にでも行って、クルージングしていたいよ」

隆も、ルリ子や佳代と同じく、ずっとヨットでクルージングしたい派だった。

「私は、今回のクルージングは、一週間ぐらいで横浜に戻って、また仕事して普段の生活に戻って、ヨットは、次のまとまった休みが来たら出かけるのでいいかな」

麻美が言った。

「現実的だな、麻美は」

「大島って、ほかの島よりも大きいからわかりやすいね」

ステアリングを握っている洋子が言った。

大島は、ほかの伊豆七島に比べて、はるかにサイズが大きいから、目標物としても操船しやすかった。

「島のてっぺんには、三原山という三角の山があるだろう。あれのおかげで余計に目標にしやすいだろう」

「三原山って、以前に噴火した山だよね」

「ああ、大島に到着して時間があったら、登ってみようか」

洋子と隆は、話している。

「あっちの小さな島はなに?」

佳代が、目の前の大島ではなく、左舷に見えている小さな島を指さして聞いた。

「あれは、利島だよ」

「利島?」

「島は、小さいんだけど、あの島も、自然が豊かで良い島だよ」

隆は、答えた。

「行ってみたいな」

「あの島には、入港しないの?」

「利島は、ヨットで行ってみたいけど、ヨットは入港できないんだよ。だから、利島に行くとしたら、東海汽船に乗って行くしかないんだ」

「なんだ。つまらない」

ルリ子が言った。

「今回は無理だけど、こんど大島クルージングするときは、大島にヨットを置いておいて、東海汽船で利島に渡ってみようか」

「それも、楽しそうだね」

ラッコのメンバーたちは、船上で笑顔になっていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

Comments

Comments are closed.

こちらのページもよくご覧になられています

 

Widgets

Scroll to top