Skip to content

レース当日の朝

1本を読もう

2本を読もう

3本を読もう

4本を読もう

5本を読もう

6本を読もう

7本を読もう

8本を読もう

9本を読もう

10本を読もう

11本を読もう

12本を読もう

13本を読もう

14本を読もう

15本を読もう

16本を読もう

17本を読もう

18本を読もう

19本を読もう

20本を読もう

21本を読もう

22本を読もう

23本を読もう

24本を読もう

25本を読もう

26本を読もう

27本を読もう

28本を読もう

29本を読もう

30本を読もう

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第205回

斎藤智

隆たちラッコのメンバーは、日曜の朝いつものように集まっていた。

ラッコのヨットは、もう既に横浜マリーナの艇庫から出され、クレーンで下されて、マリーナ前のビジター用ポンツーンに停泊していた。

そのヨットの上で隆たちは、出航のための準備をしていた。

きょうは、恒例の横浜マリーナのクラブレースの日だ。

クラブレースでは、本部艇を務めるラッコは、レース用のブイを積んだりしていた。

そのラッコの隣り、奥側には望月さんがオーナーの暁が停泊していた。

もちろん、暁は本部艇ではなくレース参加艇だ。

屈強な男性クルーたちが忙しそうにセイルをセッティングしている。

それでもセッティングも慣れたもので、暁の男性クルーたちは、数分後にはセイルのセッティングを終えて、デッキの上で朝のコーヒーを飲んでいた。

もちろん、暁のキャビンはレース艇なので中にほとんど何もない、コーヒーは隣りに舫っているラッコの女性クルーがラッコのキャビンで淹れたコーヒーだ。

「麻美さん、美味いですよ」

暁の男性クルーは、コーヒーを飲みながら麻美に言った。

「そうでしょ、これ。昨日デパートに行ったときに挽いてもらったばかりのコーヒーだもの」

「キャビンの中で淹れたんですか?」

「そうよ、ドリップできるから」

麻美は答えた。

「すごいな、ドリップが船の中でできちゃうんだ」

「うちのヨットは、中ではせいぜいお湯を沸かせるぐらいだものな」

暁のクルーたちは話している。

「雪ちゃん、きょうは、こっちに乗って一緒にレースに出ないか?」

暁のオーナーの望月さんは、暁の後部デッキのオーナーズチェアに腰かけてコーヒーを飲みながら、ラッコのデッキで飲んでいた雪に声をかけた。

「え、乗ってもいいんですか?」

「いいよ」

最近、ヨットのことがわかるようになってきて、セイリングで早く走らせることに興味のある雪は、望月さんに誘われて、ちょっと嬉しそうだった。

「ラッコは、どうせ本部艇でセイルも上げないし、人手足りてるし乗ってきてもいいよ」

隆は、雪に言った。

でも、やっぱり自分ひとりだけで暁に乗るよりも、ラッコのメンバーの皆といっしょにヨットに乗りたかった雪は、暁に乗るのは遠慮していた。

「それじゃ、私が暁さんに乗せてもらおうかな?」

麻美が、そんな雪の気持ちを察して言った。

「え、麻美ちゃん。暁に乗るの?」

香織が麻美に聞いた。

「うん。ね、佳代ちゃん!きょうはいっしょに暁に乗ろうか」

麻美は隣りに一緒にいた佳代に声をかけた。

「うん!」

いきなり麻美にほかの船に乗ろうって誘われて、ちょっとびっくりしていたが、麻美といっしょだっていうので、佳代はすぐに頷いた。

「いいですか?」

「どうぞ(^^)/」

望月さんは、麻美のことも歓迎してくれた。

麻美は、隣りに行こうって佳代を誘うと、二人はラッコから隣りに舫ってある暁に乗り移った。

「私たち、暁さんに乗せてもらうよ。雪はこっち来ないの?」

麻美は再度、雪に聞いた。

「え、麻美ちゃんがそっちに乗るのなら、私もそっちに乗せてもらおうかな」

「じゃあ、こっちにお出で」

麻美は、雪のほうに自分の手を差しだした。

雪も暁に乗り移った。

いってきま~す

「いってきます!」

ラッコの隣りに舫っていた暁が出航した。

暁のデッキ上には、屈強な暁の男性クルーたちに混じって、麻美と佳代、雪の姿があった。

皆、レース前でけっこう固い顔をしているのに、麻美と佳代だけが笑顔で、ラッコのほうに向かって、手を振っている。

「行っちゃった」

隆が三人の乗った暁が出て行ったのを見て言った。

「行っちゃったね」

香織も言った。

「さみしいね」

洋子が、隆のほうを見ながら言った。

「え、なに」

隆は、洋子に言われて苦笑していた。

「俺たちも出ようか」

「うん。ブイとか打たないといけないしね」

洋子が言った。

そして、ラッコも出航した。

「あれ、これだけ?」

隆はデッキにいる皆の顔を眺めて言った。

3人が暁に行ってしまっているので、残っているのは隆に洋子、ルリ子、香織の4人だけなのだ。

「そうだね、3人いないとけっこうさみしくなっちゃうね」

香織が言った。

「特に麻美と雪のデカいのがいないからね」

隆が言って、洋子も確かにと頷いていた。

ラッコは、レースの本部艇なので、レース海面に早めに行って、皆が回航するブイをセッティングしてこなければならなかった。

モーターセーラーのラッコは、ヨットにしては力強いエンジンが付いているので、ぐんぐんスピードを上げて加速していく。

先に出航したはずの暁は、まだレース海面の手前のほうで、ゆっくりセイリングをしていた。

ラッコがブイをセットして、スタートライン付近に戻ってくると、ほかのレース参加艇も皆、スタートライン付近に集まってきていた。

ラッコは、アンカーを打ってスタートラインに停泊する。

その周りを、レースの参加艇のヨットがぐるぐると回っている。

ルリ子がデッキの上に腰かけ、笛を吹いてスタートの合図をする。

それにあわせて、隣りの香織がレースの合図用の旗を掲げている。

ブオオオオオーン!

ルリ子が、ひと際大きく笛を吹いて、レース艇たちは一斉にスタートしていく。

はじめに暁などの本格的なレース艇がスタートしていき、順番にほかのクルージングタイプのヨットたちもスタートしていく。

はじめにスタートしていったヨットに比べ、後ろのほうからスタートしていくヨットたちは、のんびりとスタートしていく。

マリオネットも最後のほうにのんびりとセイルを上げ走っていった。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

Comments

Comments are closed.

こちらのページもよくご覧になられています

 

Widgets

Scroll to top