Skip to content

ヨットでの食事

1本を読もう

2本を読もう

3本を読もう

4本を読もう

5本を読もう

6本を読もう

7本を読もう

8本を読もう

9本を読もう

10本を読もう

11本を読もう

12本を読もう

13本を読もう

14本を読もう

15本を読もう

16本を読もう

17本を読もう

18本を読もう

19本を読もう

20本を読もう

21本を読もう

22本を読もう

23本を読もう

24本を読もう

25本を読もう

26本を読もう

27本を読もう

28本を読もう

29本を読もう

30本を読もう

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第148回

斎藤智

ラッコでは、結局スピンネーカーは上げなかった。

「また今度にしようか…」

パイロットハウス前部の窓に寄りかかりながら、うとうとしていたら気持ち良くて眠くなってきてしまったのだった。

「船、八景島に入れるよ!」

パイロットハウス前部でうとうとしていた人たちに、後ろのコクピットから麻美が大声で話しかけた。

「あ、はい」

隆は、起き上がって後ろを振り向いて、麻美を見た。

船の針路を確かめると、ヨットは八景島の手前のところにいて、島の脇にある海岸に入っていくところだった。

「皆、お昼は入港して、この中で食べるみたいよ」

麻美が眠っていた隆に言った。

マリオネット、暁などほかの横浜マリーナに停泊しているヨットも、入港していた。

「八景島だ!」

香織は、目前にそびえている八景島のタワーを見上げて叫んだ。

海上から八景島を見るなんて経験は、香織は初めてだった。

「香織ちゃんは、八景島って遊びに来たことある?」

洋子が聞いた。

「はい。この間、会社の友だちが遊びに行くって誘われて、初めて行ったんです」

香織は答えた。

東京に出てきたときに、高校生の頃の友だちと東京ディズニーランドに行ったこともあるのだが、ぬいぐるみではなく本物の生きた動物が見れて、香織は、八景島のほうが好きだった。

「そういえば、香織ちゃんっていくつなの?」

「29」

「29なんだ!それじゃ、私と同い年だね」

洋子は、香織が自分と同い年と聞いて、嬉しそうに答えた。

「ね、隆さん。私たち二人とも29で同い年なの」

「そうなんだ、29か。それじゃ、俺とも同い年じゃないか」

隆が言った。

「そうなんですか!」

香織は、同じヨットに三人も同い年がいるのかと嬉しそうに笑った。

「え、うそ」

「こんな老けた29歳いるわけないじゃない」

麻美が隆のことを小突いた。

「あ、なんだ。同い年じゃないんですか」

香織は、少し残念そうに言った。

「隆は、私と同い年よ」

麻美は、隆の本当の年を香織にばらした。

「隆さん、舵を代わって!」

入港で舵を握っていた佳代が言った。

「なんで?そのまま、佳代が舵を取って、入港させれば良いじゃないか」

隆は、佳代とは舵を交代せずに言った。

今日の入港は、佳代がヘルムスを取ることになった。

去年のヨット教室からヨットに乗るようになった人たちは皆、それぞれヨットの操船が出来るようになっていた。

隆も、自分のヨットのクルーが皆どんどんヨットの技術を上達させていくのが嬉しかった。

「これから、港に入ってお昼ごはんにするからね」

麻美は、香織に説明した。

香織は、ヨットで食べるお昼ごはんがどんなか楽しみだった。

賑やかな食事

佳代は、ヨットの舵を取って、八景島の奥にある海水浴場の前の水路に停泊させた。

「そのまま、暁さんの横にスターボードで横付けにしようか」

舵を取っている佳代に、隆は指示をした。

八景島の海水浴場の前の海面には、既に10艇近い横浜マリーナに停泊しているヨットが集まって来ていて、それぞれに横付けでつながって停泊していた。

一か月前のまだ寒かった頃は、隆たちのラッコに、マリオネットなど一部のヨットしか出航していなかったのに、春になって横浜マリーナの保管艇もみな活発に活動するようになってきたようだった。

暖かくなってきたというよりも、先週から始まったヨット教室のおかげのほうが大きいかもしれない。

ヨット教室の生徒たちがやって来たことによって、その生徒たちを受け入れたヨットのオーナーや乗組員たちも、生徒たちを乗せてあげるために、横浜マリーナに足を運ぶ人たちも必然と増えたようだ。

「隆君のところは、いつも華やかでいいね」

レース艇で若い男性クルーが多い暁の望月さんが、隆に話しかけた。

「そうですか。うちは女性ばかりで僕なんかいつも船の上じゃ小さくなってますよ」

隆が答えた。

「どこが小さくなっているのよ」

麻美は、笑顔で隆のおでこを小突きながら言った。

「今日のお昼は、何を作る?」

ルリ子に聞かれて、麻美はルリ子とキャビンの中に入った。

「どうしようか?」

「パスタがけっこう余っているかも…」

ギャレーの棚を開けて、中を確認したルリ子が言った。

「そうね、それじゃパスタにしようか」

麻美が言った。

それを聞いて、遅れてキャビンに入って来た佳代が、レンジの下の棚から大きなパスタ鍋を出した。

「ええ、船の中でパスタも作れるんですか?」

香織が大きなパスタ鍋を見て言った。

「そうよ。香織ちゃんは、パスタ嫌い?」

「パスタは大好きです!でも、ヨットでパスタが作れるって聞いてちょっと驚き」

香織が言った。

「なんでも作れるわよ」

麻美が言った。

「ほら、レンジの下には、オーブンだって付いているから、ケーキだって焼こうと思えば焼けるわよ」

麻美は、レンジの下のオーブンのドアを開けてみせた。

「香織ちゃん、ケーキとかお菓子作りってするの?」

「うん。たまに」

「そうなんだ。ケーキとか自分で作るんだ!すごい!私なんて食べるほう専門」

洋子が驚いていた。

「洋子ちゃんは、見た目は可愛くて女の子らしく見えるけど、けっこう活発なほうだものね」

一年一緒にいて、すっかり洋子の性格を理解している麻美が笑った。

隆もキャビンに入って来て、パスタ作りを手伝っている。

「あれ、雪ちゃんは?」

雪だけいないことに気づいて、麻美が聞いた。

「雪。隣りの暁でしゃべっているよ」

「そうなの?」

「なんか興味深そうに、暁のニューセイルを見せてもらって、レクチャーされていたよ」

隆が言った。

「そうなんだ。雪ちゃんもヨットのことになると夢中になるからね」

麻美が笑った。

「去年の雪ちゃんとぜんぜん違うよね」

「うん。去年は、雪ちゃんってもやいも結べなくて、いつもセイリング中もコクピットで座っているだけだったものね」

佳代と洋子が話している。

ルリ子の煮ているパスタ鍋から美味しそうなパスタのにおいがいつの間にかキャビンの中じゅうに広がっていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

Comments

Comments are closed.

こちらのページもよくご覧になられています

 

Widgets

Scroll to top